ロトカ・ヴォルテラの方程式は生態学で捕食者(predator)と被食者(prey)の関係性の分析等に利用された古典的数理モデルです。
WikiPediaでは5年周期でこの方程式に近い個体数変動をしている例として、食う食われるの関係にある2種類の獣(ネコ科動物とウサギ)の毛皮取扱量がグラフで示されています[1]。
動物が引き起こす無軌道に見える現象が整然とした数式と同じ動きを取ることがあるのは面白いですよね。
ロトカ・ヴォルテラの方程式にしたがってグラフを描き、その動きに従ってしまうガンダムの世界観よりだいぶ残念な宇宙で戦う2つの組織を想定し、動画を作成してみました。
本記事では「機動戦士ガンダム 水星の魔女」を楽しむポイントを紹介しつつ、主役たちを翻弄する大人たちの思惑を用いて、賢すぎるロトカ・ヴォルテラの方程式で遊んでみようと思います。
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」予習情報
まずは、第1期(プロローグ、第1話~第12話)を視聴してみて、事前に知っておいた方がより楽しめるポイントをお伝えしたいと思います。
宇宙観を理解するためにはシリーズの原点「機動戦士ガンダム」を観よう
疑問が蓄積したら原点「機動戦士ガンダム」がお勧め
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」は丁寧に作りこまれていて、細かい設定を拾うことができる構造になっています。しかし、ぼうっと見ていると「どうゆうことだ?」と設定が分からなくなる場面もあります。
ちゃんと集中して見ろよ。あと、公式の用語解説も参考になるぞ。
参考になります。
しかし、この作品を観ながらモヤモヤしないで済むならそれに越したことはないでしょう。私は「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のチュートリアルとして、1979年に放送されたシリーズ最初の作品「機動戦士ガンダム」を観ておくことをお勧めします。
「機動戦士ガンダム」はナレーションや軍人同士のキビキビしたやり取りによってフィクションとしての説得力があり、特有の宇宙観が理解しやすいアニメになっています。第1話・第2話は有名なキャラクター2名が登場し、大活躍しています。放映された時代の憧れの生活を宇宙空間上に展開しつつ、宇宙規模での争いに巻き込まれて行く少年の姿が描かれています。
疑問解決には「機動戦士ガンダム」の第1話・第2話で十分だけれど
お得なことにガンダム宇宙観の素朴な疑問は「機動戦士ガンダム」の第1話・第2話(・第3話)のみで、解決してくれます。
- Q1:地球以外に人は住めますか?
- A1:第1話冒頭のナレーションを良く聞きましょう。
- Q2:天体を人の力で動かすことは可能ですか?
- A2:第2話終わりで一例が示されています。
- Q3:宇宙船って穴が開いても大丈夫ですか?
- A3:第2話冒頭の場面で解決方法が提示されています。
- Q4:宇宙船内の移動はどうするの?
- A4:歩けます(第1話参照)。システムについては第3話中頃に装置名が明かされます。
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」に向けた予習としては第1話・第2話で十分ですが、展開が分かりやすいのでその先もお勧めです。マイルストーンとしては、第9話に非常に有名なセリフ、第14話・第15話あたりは物語の奥行が広がるエピソードがあります。設定理解のためには、第11話・第15話の冒頭ナレーションも分かりやすいです。
「モビルスーツ壊しすぎ!?」には背景がある
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のプロローグを終え、第1話に進むと学園を舞台としたストーリーが始まります。ここでは学生同士が実習や「決闘」で、モビルスーツを用いて戦うことになります。
これらの戦いは実践形式でモビルスーツが本気でぶつかり合う展開になります。スポーツ的なルールがあるようですれど、負けた相手のモビルスーツは大きく損傷することもあります。
なんか文句ある?
いや。いいんですけど、学生だしお金とか安全性とか気になりませんか?
私はこのモヤモヤは意図的に組み込まれたものと解釈しました。つまり、そこまでして戦う理由をキャラクター毎に丁寧に探していくと、物語の全体像が見えてくる構造になっているように思います。
背景を見失わないために注目すると良いキャラクター
でも、色恋が背景なのはしっくりこないよね。
いや、そこは氷山の一角だろ。親や送り込んでいる組織に操られている人や、影響を受けつつも自分の意思が強い人もいるよね。
「好きなキャラクター」、「かっこ良いモビルスーツ」などを糸口にしながら背景を掘り下げて考えると奥行きが広がるタイプのアニメだと思います。とはいえ登場人物が多いので見失うこともあります。私も一巡目では見失いました。
背景を理解するために、主役スレッタ、相方ミオリネ、グエルは多面的に描かれているのでやや混乱します。それに対して、ピンクのヘアスタイルが特徴的な「チュチュ」、もみあげおじさん・グエルパパは、いずれも性格が素直でブレないので分かりやすいです。
主役スレッタの独特のモーションと一文字セリフに注目
極度の人見知りにも関わらず、曲がったことが嫌いな主役スレッタ。学園初日の登場シーンを最初観たときは「やり過ぎなのでは」と感じましたが、物語が進行してから振り返ってみるとそういったことがあり得るキャラクターだと理解できました。普通に「初めまして」の挨拶ができてしまうのは、むしろおかしいかもしれません。
そして注目はリアクションのセリフです。ひらがなにすれば「母音一文字」なのだろうけれども文字にできません。できないけれども、表情と併せてその時の心情がよく表れています。その他、とっさの一言も「秀逸な悪口」だったりします。
物語が複雑に進行する中で、それを見事にこじらせる人間味あふれるスレッタムーブに注目です。
ロトカ・ヴォルテラの方程式で遊ぶ
まずはそんなロトカ・ヴォルテラの方程式の例[1]から、お手軽にオイラー法で初期値を与えて積分的に描いてみました。5000点でほぼきれいな循環軌道となりました。それぞれのパラメータにはどんな意味があるでしょうか。

ロトカ・ヴォルテラの方程式に従うちょっとネコ科な循環世界
ネコ科動物より少しだけ賢い宇宙で戦う2つの組織をロトカ・ヴォルテラの方程式にしたがって描いてみると、冒頭の動画のような不安定な社会が出来上がりました。
動画は茶色勢力(Prey)の最盛期に小さな緑色勢力(Predator)の攻撃を受けるところから始まります。グラフは最初に示した「ロトカ・ヴォルテラの方程式」を時系列で展開したものです。緑色勢力(Predator)は最初の攻撃からすぐに大きな攻撃を実行し、茶色勢力(Prey)を壊滅させます。
動物の世界より少し賢くするため、捕食者(Predator)と被食者(Prey)の入れ替えました。タイミングは衰退期に両者が同数となる点が一番しっくりくるかもしれません。緑色勢力は飢えて減少しきったところで自ら生産を始めPrey化させ、時を同じくして、茶色勢力も攻撃され、食われ続けた過去に倣い勢力を盛り返したところでPredator化するというシナリオです。
ロトカ・ヴォルテラの方程式をフィクションの世界で考えてみる
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のキャスティングボードは大人たちが握っており、学生はそれに翻弄されている状況です。
そんなキャスティングボードをロトカ・ヴォルテラの方程式に従ってしまうネコ科動物が担った場合どうなるでしょうか。数式によれば、主役(Prey)の繁栄が爆発的に進む時期に、それを追従して悪の組織(Predator)がそこそこ増えるが即座に食いつぶし、両者とも停滞する時間が長く続くということです。
しかし、ちょっと賢すぎるネコ科動物とはいえ、悪の組織(Predator)は停滞期に「働き出したりしないだろうか?」、抑圧された主役(Prey)は「悪の組織(Predator)から奪えばよいという発想にならないか?」と、様々な疑問が浮かびます。
ロトカ・ヴォルテラの方程式の面白さ(互いの特性が個体数を規定する)

ロトカ・ヴォルテラの方程式は均衡点(x=s/r、y=p/q)があります。動画の元にしたケース(Base Case)でも均衡点にあれば理論上個体数は変化しません。
ここでは均衡点付近を初期値として、パラメーターの変動がどのように影響するかを検討してみます。
まず、元のケース(Base Case)が不安定化したのは、均衡点のPrey個体数が低いためと考えられます。それでも、均衡点付近を初期値とすれば安定します。
そこでネコ科動物(Predator)には「Preyが増えたからって子孫増やすのやめてください(【r】を低く)」と頼みます。その結果が、緑で示したケース(Rational Case)となり、均衡点の個体数が高く安定しています。
別のケース(Drought Case)では元のケース(Base Case)よりPreyの餌の質を落としてみます(【p】を低く)。すると、均衡点のPreyの個体数に変化ありませんが、Predatorの個体数が減り不安定化します。
PreyとPredatorの共通点も重要です。両者とも個体数が減る要因にそれぞれの個体数が乗算されており、数が0に近づくとしぶとく死なないことです。Preyの場合は少数になると食われずらくなる様子をイメージしやすいですが、Predatorの場合は無駄な縄張り争いがなくなる感じでしょうか。
まとめると、以下の条件が重なった時に何年も飢えるという状況に陥るようです。
- Preyは無尽蔵に増え、減少するのはPredatorに食われるときのみ
- Predatorは増えるのはPreyが増加した時のみで、ほっとけばすぐ潰しあう
- 均衡点から離れた初期条件で発生する
- PreyとPredator共にしぶとい
こう考えるとPreyも相当に賢いですし、Predatorの方が何か不幸なものを背負っている気がします。理解に苦しむこんな変動が動物界等ではまれに観測されることがあるようです。
以上、ロトカ・ヴォルテラの方程式のパラメーターを操作し、現実に当てはめてみるときに参考にしていただければと思います。
「機動戦士ガンダム 水星の魔女」での負の連鎖は当然ロトカ・ヴォルテラの方程式より賢いプレイヤーが起こす物語ですが、「主役を中心に負の連鎖を新たな方向に導くことができるのか。」がアニメの見どころではないかと思います。
ロボットアニメの導入として
ロボットが苦手。アニメのジャンルとしては大きな割合を占めていながら、見ない人は一生見ない可能性のあるジャンルではないでしょうか。
私もロボットが苦手でした。強いて親しみを感じていたロボットを挙げれば、アニメ「銀魂」の第17話平賀さんが作ったカラクリ達、「フリクリ」の「カンチ」、おばあちゃんロボット「WASHIMO」ぐらいでした。ぬくもりを感じるロボットに限定されていました。
ただ「映像研には手を出すな!」の第5話~第8話を観てしまうと、人型ロボットアニメの作り手側の思いが案外繊細なものであることが分かってしまい、無視するのは忍びないなあと感じていました。
そんな中で注目したのは「機動戦士ガンダム 水星の魔女」です。この作品はロボットアニメ特有のギラギラ感が無く、ガンダムとしては初心者向けの雰囲気もあります。
今回は「映像研」が提示してくださった心得と初心者向けの雰囲気に期待し、取り組んでみました。
公式情報
公式のキャラクターリストは容姿が確認でき、会社、学生寮、人物も踏まえた簡潔な相関図もあります。宇宙服着用時は髪型が特徴的なチュチュでも見分けにくくなりますので、顔の作りなどで確認ができます。モビルスーツについては特設コーナーがあります。名前や簡易な相関関係を見る程度なら第3話ぐらいから参考にしてみてもよいと思います。
作中で飛び交うガンダム専門用語に関しては、用語解説に登場する組織名・技術名などが列記されています。
進行中の第2期に関しては現在公開されている相関図からは想像がつかない勢力関係で物語が進行しています。第1期を手っ取り早く振り返りたい場合は、もう一つの公式「ガンダムチャンネル」から、以下のダイジェストがお勧めです。シリーズ最初の作品「機動戦士ガンダム」の有名キャラクター・シャーの声優様がナレーションされています。
同様に以下のダイジェスト動画で、第2期の前半を振り返ることができます。渦中のキャラクターがそのままの声でナレーションされています。できれば四文字熟語でまとめてほしかったのですが、一貫して震え上がる怖さのままでした。この怖さが主役たちを輝かせています。
本ページの情報は2023年4月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。










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